校舎を離れ、徒歩3分

学校の敷地の片隅に

今は誰にも使われていない、忘れられた廃屋がある。

重音部の入部希望者はそこに来るように・・・・・・と、部員募集の紙に書かれてあった。

少しだけの期待と、巨大な不安を抱えつつ

変態狂人、門惰眠 苦宙苦宙(通称:チンタイ)は、その廃屋を目指して歩いていた。






少し彼の話をしよう。






チンタイの人生は、平凡なものだった。

ごく普通の家庭に生まれ

平凡な毎日をただ何となく過ごし

無難に生きていた。

そんなチンタイの人生は、ある日を境に一転する。






それは中学2年の時だった。

友人に借りた一枚のCD

「歩く肉」というバンドの「志村!! 後ろも前も右も左も」というアルバムが

チンタイのそれまでの人生を、すっかり否定してしまった。

アルバム内にあふれる狂気、憎悪、ガチホモ感、しょっぱ味に

チンタイの心はグチャグチャにかき回された。




それからチンタイはライブハウスに通うようになり

「歩く肉」を含む沢山のバンドのライブを見ているうちに

それまでの平凡な性格のチンタイは死に

いつしかチンタイは

変態狂人になっていた

パンクロックに出会った人間は

良い子ちゃんでは、いられなくなってしまうのだ。





そんなチンタイがギターを手にするまでには、そう時間は掛からなかった。

それは憧れからの行動だったが、自分の中の狂気をぶつけるためのものでもあった。

チンタイは来る日も来る日も、自分の中の狂気をギターという媒体を通してこねくり回し続けた。

誰にも内緒で、ヒッソリとこねられ続けた狂気はいつしか

誰にも理解できないような、邪悪な悪魔的変態狂気へと成長していった・・・・・・。







そんなある日

高校生になったチンタイが、部員募集の紙がいっぱい貼られている掲示板の中の

美術部員の書いた「ちょっとエッチなアニメ風の部員募集チラシ」をチラ見しながらグフグフしていると

ふと、重音部という見慣れない名前の部活のチラシが目に入る。

そこに書かれていた「世界にケンカを売りましょう」の一言が

チンタイの心に強く響いた。



重音部・・・・・・よく解らないが、軽音部みたいなものだろうか。

この部活に入れば、もしかしたら・・・・・・



そんな淡い期待を抱き、チンタイはひとまず見学だけでもしに行くことにしたのだった。

そして・・・・・・




辿り着いたのは、薄汚い廃屋。

もはや自分ではどうにも抑えられなくなってしまった変態狂気を解放するには、うってつけのホコリっぽさだった。

チンタイが意を決して廃屋の入口を開けるとそこには

想像を絶する悲惨な光景が広がっていた。






全裸で両手両足を縛られて目隠しをされた状態で、肛門からアスパラを数本生やしてピクピクしている巨漢の男

隅の方で体育座りをしながら不気味な人形を持ち、その人形に「ねぇ、お願い聞いてよ。次元の狭間に取り残されたいんだ。永遠に独りぼっちになりたいんだ。いいだろ?頼むよ。」と懇願している、ゾンビみたいな男

学校一の極悪ヤンキー集団「へその緒大事にとっておき隊」の隊長とその仲間数人

そのヤンキー達に囲まれて泣きそうになっているクソブサイク

そして廃屋内を包む、退廃的暗黒感。

塩気。

紅しょうが臭。






その状況を目の当たりにしたチンタイは

そっとドアを閉めるのだった。








つづく。











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